2009年5月29日金曜日

音楽 : ANTON BRUHIN

A)
B)
C)

C)奇才の70年驚愕のデビュー作が初CD化。あふれるアイディアを詰め込んだ意欲的なエクスペリメンタル・ポップ・アルバム。素朴な無国籍民俗音楽、濃厚なブルース、サイケデリックなフォーク、前衛的なフリー・ミュージックと、曲調はとりとめがないが、いずれもどこか牧歌的なユーモアを感じさせる20曲。ブリューヒンは口琴、ヴォーカルの他に、CHフォン(指穴を開けたビニール管にサックスのリードを輪ゴムで取り付けた自作楽器)、ハーモニカ、フルート、フィドル、パーカッションと、すでにマルチ・インストゥルメンタリストぶりを発揮している。他にシュテファン・ヴィットヴァー(ギター、名手!)とクリスチャン・コラディ(ベース)が参加。リーフレット6面に渡るポップ・エキゾティカなドローイングもブリューヒン作。名盤。ボーナス・トラックとして79年にリリースした口琴アルバムからソロを3曲とデュオを2曲収録。

B)70年代にローテク機材を駆使してクリエイティヴィティあふれる奇妙な作品群を残した、知る人ぞ知るスイスの奇才アーティスト/音響作家の76~81年の未発表作品4作を収録。ラジカセの録音+ポーズ・ボタンで声とあらゆる物音を一瞬ずつ録音して曲にしたローテク・リアルタイム・サンプリングや、オープンリールのテープをループにして、自作のプラスチック・パイプの楽器演奏をリアル・タイムにオーヴァーダビングしたローテク・テープ・ディレイ・システムなど、いずれも奇抜なアイディアでローテク機材の短所をエフェクトに転換し、驚くほどチャーミングな曲を作ることに成功している。一見「天然」と思わせるが、実は緻密な計算(作曲)に基づいており、いわゆるロウファイとは全然違うことに注目。

A)巻上公一との共演など近年は口琴のスペシャリストで知られるブリューヒンだが、ネオダダ出自のアーティストとして、70年代にはローテク機材を用いたクリエイティヴィティあふれる作品群を残している。本作は76~77年の作品集。表題作は、単語を一文字だけ変えて別の単語を作る、しりとりのような言葉遊びを、ディレイをかけながら朗読、録音したリズミカルな音響詩的作品。もう1作はラジカセ2台のピンポン録音を繰り返し、CHフォン、調律笛、ハーモニカ、ピアノ、声、ノイズなどを 重ねた奇妙な一人アンサンブル。音質の劣化が音響的な深みを生み出している。

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