2026年5月17日日曜日

音楽 : VIRGINFUGS (ESP-Disk')


Originally illegal Released by ESP-Disk ESP 1038, 1967
Originally Produced by Ed Sanders, Harry Smith
Tracks A1, A4, B1, B5 released as bonus tracks on The Fugs First Album CD.
(Side A)
A1. We're the Fugs (Ed Sanders) - 1:09
A2. New Amphetamine Shriek (Peter Stampfel) - 2:18
A3. Saran Wrap (Ed Sanders) - 1:12
A4. The Ten Commandments (Tuli Kupferberg and GOD) - 2:50
A5. Hallucination Horrors (Tuli Kupferberg) - 2:03
A6. I Command the House of the Devil (Ed Sanders) - 3:22
(Side B)
B1. CIA Man (Tuli Kupferberg) - 2:48
B2. Coca Cola Douche (Tuli Kupferberg) - 1:35
B3. My Bed Is Getting Crowded (Tuli Kupferberg) - 2:30
B4. Caca Rocka (Tuli Kupferberg) - 1:30
B5. I Saw the Best Minds of My Generation Rot (Allen Ginsberg, Ed Sanders) - 4:43
[ The Fugs ]
Ed Sanders - vocals, percussion
Tuli Kupferberg - vocals, percussion
Peter Stampfel - fiddle, harmonica, guitar, banjo, vocals
Steve Weber - guitar, vocals
Vinny Leary - guitar, vocals
Lee Crabtree - keyboards, percussion, vocals
John Anderson - bass guitar, vocals
Ken Weaver - drums, vocals
(Original illegal ESP "Virin Fugs" LP Liner Cover & Side A Label)

 野卑なジャケットがいかにもアンダーグラウンドな内容に見合った本作はインディーのESPレコーズがバンドに無断でリリースしたアルバムですが、優れた内容からファンの人気の高いものです。次作『Tenderness Junction』(Reprise, 1968)からファッグスは大手メジャー、ワーナー・レコーズ傘下のフランク・シナトラのレーベル、リプリーズに移籍し(実際はリプリーズの前にワーナー傘下のアトランティックにお蔵入りになった未完成アルバム1作があり、21世紀に発掘発売されました)、1970年までに3作のスタジオ盤、1作のライヴ盤を発表していったんファッグスとしての活動を休止することになりますが、双頭リーダーのエド・サンダース(1939-)とトゥリ・カッファーバーグ(1923-2010)はもともとニューヨークの反体制知識人を代表する詩人・批評家・ジャーナリストだったので、'70年代はもっぱら文筆活動に戻り、'80年代にファッグスとしての音楽活動を再開します。本作はもともとファッグス側に発売の意向はなかった問題のあるアルバムで、初回盤は老舗のフォーク・レーベル、フォークウェイズ・レコーズから私家版で限定発売された『ファッグス・ファースト・アルバム』の再発売と『ファッグス・セカンド・アルバム』を発売したニューヨークの新興インディー・レーベルESP-Diskがファースト・アルバムとセカンド・アルバムに未収録になっていた未発表曲の版権を主張し、バンドに無断でリプリーズからの新作の前に編纂・発売したのが本作『Virin Fugs』になりました。またESPはセカンド・アルバムを勝手に改題・曲順を変えて新作に見せかけた『Kill For Peace』1967もリリースしています。のちにESPは『Virin Fugs』にも洩れたファッグスとホリー・モーダル・ラウンダーズの未発表曲のカップリング盤『Fugs 4, Rounders Score』(ESP, 1975)もリリースしますが、ファースト・アルバムのセッションではファッグスのバックバンドをラウンダーズが勤めた楽曲とラウンダーズ単独の楽曲が同時に録音されていたので、ファッグス名義の本作でもラウンダーズ単独曲のA2「New Amphetamine Shriek」が混在しています。

 ファッグスはリプリーズからの1967年~1970年の4作(+未発表アルバム、レア・ミックス&ボーナス・トラック)をまとめた3枚組CD『Electromagnetic Steamboat: The Reprise Recordings』(Rhino, 2001)、さらに1965年~1966年録音の『ファースト・アルバム』『セカンド・アルバム』に『Electromagnetic Steamboat』にも未収録の1965年~1969年の未発表曲、未発表ライヴをまとめた4枚組CD『Don't Stop! Don't Stop!』(Big Beat, 2010)で'60年代オリジナル・ファッグスの全録音の定本全集をリリースしましたが、セカンド・アルバムの改題リリース『Kill For Peace』はもちろん、『Virin Fugs』と『Fugs 4, Rounders Score』も無断リリース作品としてオリジナル・アルバムに含めず、本作からはA1, A4, B1, B5のみをファースト・アルバムのボーナス・トラックとして追加採録しています。『Virin Fugs』全編はオリジナルLP通りに2005年にESP-Diskから初CD化されましたが、おそらくのちに『Don't Stop! Don't Stop!』でも本作をオミットしたファッグス側の抗議からそれきり廃盤になっています。本作でファッグス側がアルバム化(CDボーナス・トラック採用)・ボックス収録を認めた楽曲はA1「We're the Fugs」、A4「The Ten Commandments」、B1「CIA Man」、B5「I Saw the Best Minds of My Generation Rot」の4曲のみということになり、人気曲のB2「Coca Cola Douche」(コカコーラ・ドゥーチェとは、Deuce=ジュースとDuce=総帥にかけたダブル・ミーニングです)はのちのリプリーズからのライヴ盤『Golden Filth』(Reprise, 1970)のライヴ・ヴァージョンで定本としたい、という意向なのでしょう。しかし本作は発売以来40年以上に渡って傑作ファースト、最高傑作セカンド・アルバムに次ぐファッグスの名盤としてリスナーに愛されてきたアルバムであり、オリジナルLP通りの収録曲・曲順で親しまれてきたファッグスの代表作のひとつです。下品で野卑なジャケットもファッグスの強烈なダダイスト&アナーキスト的スタンスをよく表しています。AB面で33分程度の短い収録時間がかえって強い凝縮感を生み、尖鋭インディー・レーベルESP-Diskからのファッグス作品として次作以降のリプリーズ作品よりもリスナーからの支持の高いアルバムかもしれません。プレミア盤になってしまったCDよりも中古盤のアナログLPの方が入手しやすいアナログLP時代のロングセラー・アルバムです。ファッグスの了解を得ずに発売され、ファッグス側の意向でのちのCD再発を差し止められたオブスキュアなアルバムながら、せめてYouTubeにアップされたパブリック・ドメイン音源からでも聴いておきたい作品です。ファッグスの音楽がいつも失わなかったのは本質的な自由の感覚であり、たとえそれが検閲を避けた迂回な表現を取っていようと、メジャー・レーベルに移籍し洗練された音楽性に移行して一見後退したように見えようと、さらに根源的な資本主義文化下の体制批判の不毛性に直面しようと、それが強固なファッグスの意志を挫けさせなかったのは毎回強調してもいいことです。まとめとして、総合音楽サイト、allmusic.comでの本作のレヴューを引いておきましょう。

Virin Fugs (ESP-Disk, 1967)
Allmusic Rating: ★★★★
User Rating: ★★★★
レヴュー=リンゼイ・プラナー
 ファッグスは、グリニッチ・ヴィレッジのビートニク派反体制知識人を長年に渡って代表するグループでした。 ファッグスの最も有名な録音は、『ファッグス・ファースト・アルバム』と『ファッグス・セカンド・アルバム』として発売されて広く知られたなフォークウェイズ・レコーズへのセッションですが、同時期のファッグスの伝説的かつさらに常軌を逸した演奏には、1966年制作のローファイな自主録音LPの本作『ヴァージン・ファッグス』があります。本作は前衛的インディーズのESP-DISKレーベルから発売され、ファッグスの中心メンバーであるトゥリ・カッファーバーグ(タンバリン、マラカス、ヴォーカル)、エド・サンダース(タンバリン、マラカス、ヴォーカル)、ケン・ウィーバー(ドラムス、ヴォーカル)の三人に加えて、ホリー・モーダル・ラウンダーズのオリジナル・メンバーでもあるピーター・スタンフェル(ギター、フィドル、ハーモニカ、ヴォーカル)とスティーヴ・ウェーバー(ギター、ヴォーカル)のデュオとのセッション、そしてスタンフェルが抜けたウェーバーとヴィニー・リアリー(ギター、ヴォーカル)、ジョン・アンダーソン(ベース、ヴォーカル)とのセッションで録音されました。スタンフェルの貢献は、反麻薬の風刺歌「新アンフェタミン酋長 (New Amphetamine Shriek)」にのみ見られます。他の曲ではカッファーバーグとサンダースがリーダーシップを発揮し、ファッグスのアティチュードである心、体、精神、そして(それを必要とする人のために)魂を詠いあげます。 「おれたちはファッグスだ (We're the Fugs)」はグループの非公式テーマソングであり、「おれたちはファッグス/葉っぱが大好き/おケツが大好き/バーガーが欲しい」と冒頭から宣言し、明確なメッセージを高らかに旗印とします。 カッファーバーグは、前述したスタンプフェルの曲と同じく、「恐怖の幻覚 (Hallucination Horrors)」でベンゼドリンとモルヒネ中毒者のハードドラッグに関する見解に賛意を表明します。カッファーバーグはまた、「サランラップ (Saran Wrap)」や大企業からの訴訟を挑発するような「コカコーラ・ドゥーチェ」などの「実用的ラヴ・ソング」を堂々と披露します(後者は、メジャー・レーベルのリプリーズからの1968年のフィルモア公演を収録した1970年リリースのライヴ盤『黄金ウンコ (Golden Filth)』では、「CCD」にタイトル変更を余儀なくされました)。のちに改作されるカッファーバーグによる現代版「神による十戒 (The Ten Commandments by God)」のオリジナル・ヴァージョンと、「おれはおれたちの世代の最高の精神が腐敗するのを見た」として再構成されたアレン・ギンズバーグ1956年の詩篇「吠える」のサンダースの解釈は、他の他では聴けないハイライト曲とともに、本作『ヴァージン・ファッグス』が初出になりました。
(拙訳・全文)
引用

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