『鳥獣戯楽』は1970年の大阪万博でソノシートで販売されたが、全く売れず闇に消えた最高度に危険なアイテム。当時とある筋から大野に発注されたもので、これが世界の民謡と万博のテーマ曲を動物の声のみで作るという企画‥‥。このトンデモ依頼に真っ向から取り組んだのが本作で、同時に“ソロ・アーティスト”としての大野をみたとき、音盤化されたものとしてはこの作品が事実上のファーストといえる。といっても可変ピッチのレコーダーもシンセサイザーもマルチトラックもスタジオに無い時代。そこに大野の号令で鉄腕アトム制作時の伝説的スタッフである小杉武久、高橋巌、桜井勝美が再び集結。小杉はテープ素材のピッチ選定やアレンジプランの作成と重要な役割を果たし、人海戦術でテープを切り貼りして作品を構築。このチームが夜を徹して取り組んだ結果、世にも過激なこの国産テープ作品が誕生した。また、当人達は意図していなかったと思われるが、テープの継ぎ目をマスキングするため薄くエフェクト(リヴァーヴ成分など)をかけたため、ただでさえ異様な作品に更なる異常作用が働きサイケデリックにすら響く。この凄さ、そんじょそこらの実験アヴァン作品とは領域を異にする極点である。
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